デザインにおいて「見た目のバランス」は非常に重要な要素です。ところが、数値上ではまったく同じサイズであっても、人間の目には“違った大きさ”に見えてしまう現象が多々存在します。その典型例が、丸・三角・四角といった形を並べたときに生じる錯視です。
たとえば、それぞれの高さをまったく同じピクセル数で揃えたとしても、四角は最も大きく、丸は少し小さく、三角はさらに小さく見えてしまうことがあります。これは、人間の視覚が「面積」や「頂点の数・形の安定感」などを手掛かりに対象の大きさを判断しているためです。
このような錯視は、ロゴデザインやアイコン設計、UIパーツの配置など、“形の異なる要素を視覚的に並べる”あらゆる場面で無視できない問題となります。数値だけを揃えて並べたとしても、結果的に「なんとなく不揃い」「整っていない」印象を与えてしまうのです。
そのためプロのデザイナーは、見たときに“同じ大きさ”に感じられるように、意図的に数値的なサイズを調整します。丸は少し大きめに、三角はさらにひと回り大きく、四角はやや小さく──といった具合に、「視覚補正」を施すわけです。
このような“錯視”は、センスだけでなく理屈のある現象です。デザインを行う際には、
人が実際に“どう感じるか”
目が“どのように騙されるか”
を知ったうえで設計していくことが、洗練されたアウトプットにつながります。